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連載集落川谷もよりのビジョンづくり試し読み季刊地域Vol.59 (2024秋号)

新潟

PR事業 ありのままの暮らしを知ってもらう | 「川谷もより」地区のビジョンづくり④

2025年11月28日、『季刊地域』の執筆陣が語るセミナー「ゆるがぬ暮らしをつくる~『季刊地域』セミナー」が開催されます。セミナーの開催を記念して、講師・鴫谷さんの記事をご紹介します。

年5回発行の「川谷もより通信」。住民の紹介、地域の動き、季節の話題など、A4判1枚に3〜4本の記事を掲載している
執筆者:鴫谷 幸彦(新潟県上越市・たましぎ農園)

『季刊地域』2024年秋号(No.59)掲載「PR事業 ありのままの暮らしを知ってもらう」より

執筆者:鴫谷 幸彦

新潟県上越市の農家。農地を維持しながら新規就農者を育てる「川谷もより農地中間管理チーム」の実践に携わる。

 地域ビジョンをつくるために、住民全員で何度も集まり話し合う過程は、今思い出してみても幸せな時間でした。時には誰かの家に集まって、持ち寄りのごちそうをつつきながら、古い住民も新しい住民も、昔の話や楽しいアイデアを思う存分語り合いました。そんな雰囲気の中で紡がれてゆくみんなの夢。その過程に、川谷もよりの魅力の源泉を感じたものです。

 今回は、川谷もよりの魅力とは何か?そしてその魅力を内外にどう伝えていくかという「PR事業」の話です。

もより通信

 地域の出身者や、交流者に向けて、川谷もよりの様子や活動を伝えるニュースレター『川谷もより通信』を年5回発行し、届けることにしました。毎号「季節の話題」と「住民の紹介」があり、新旧住民の暮らしぶりやビジョン実現の足取りが共有できます。

 意外だったのは地元住民に好評だったこと。A4サイズ1枚の通信ですが、「楽しみにしている」という声や、「ネタに困ったら載せてくれ」と長文記事を投稿してくれる住民も出てくるほど、今では四つの集落をつなぐ大切な存在です。

大交流会

 「地域から出た者も、つきあいのある人たちも、みんな集めて、盛大に交流会をやりたい」。PR部会が力を込めて打ち出した夢でした。

 もより通信で交流人口との関係性を結び直したことで、次なる夢の実現に踏み出します。それまで同窓会はしていても、年代を超えて一堂に集まることはありませんでした。また、様々な都市交流も続けてきた当地ですが、関係者だけの交流にとどまっていました。棚田オーナーや児童養護施設のサマーキャンプ、法政大学人間環境学部のフィールドスタディと、それをきっかけに生まれた「法政米米クラブ」などです。

 2017年11月4日、初めての「川谷もより大交流会」が開催となりました。集まったのは70名超!出席者にマイクをまわすと、懐かしい話が次々に出て盛り上がり、たくさん笑いました。最後は旧川谷小学校校歌をみんなで歌って終わりました。

大交流会。2017年11月、旧川谷小学校体育館に住民、出身者、交流者が一堂に集まった

地元新聞コラム

 ビジョン策定以前からの取り組みになりますが、上越タイムスという地元紙に、月1回「やまざと通信」というコラムを連載しています。最初は地域おこし協力隊員・石川盛和さんと、移住の先駆・天明伸浩さん、そして私という3人で始めたリレー連載ですが、12年目に突入し、(卒業した人も含め)10人という執筆陣に成長しました。

 上越市民には「川谷もより=移住者が増えている元気な地域」という事実は十分伝わっていると思います。なにより長期にわたる連載は、この間の川谷もよりが歩んできた貴重な記録です。

「川谷もよりマップ」。ワークショップを経て、地域の魅力を出し合い、楽しいマップに仕上げた

もてなしすぎない交流が大事

 川谷もよりでは、過去に都市民との交流が熱心に行なわれた時代があったことは前にも触れました。元来の性分から、おもてなしが常態化し、高齢化が進むにつれ、受け入れ側に交流疲れが生じ始めた頃、私は移住してきました。それを見ていた私は「交流人口よりも移住者を増やさないと暮らしが続かない」と批判的に思ったものです。年老いても田畑を維持し、ここで暮らし続ける住民に対し、体験とリフレッシュに訪れる交流者たち。彼らは地域に何を残したのか、われわれは単に消費されるだけではないかと憤りすら感じたからです。

 それから10年以上が経ち、高齢化やコロナ禍を理由に休止や縮小となった交流がほとんどです。しかしそれでも通い続ける人たちに、今では頭が下がる思いです。イベントの運営や草刈りの手伝いに来てくれる人、家族を連れてくる人。彼らとの再会を喜び、なつかしむ住民を見るにつけ、暮らし続ける人と同じように、通い続ける人、心を寄せ続ける人もまた尊い存在であることに、最近ようやく気が付きました。

 情報発信やイベントは一見華やかで、にぎわいを創出してくれます。しかし何のための誰に向けてのPRなのか、時々検証が必要だと思います。目的からずれていないか、背伸びしすぎていないか、自己満足で終わっていないか……。交流人口をツーリズムや地域の産品のお客さんと割り切る考え方もあります。本気で移住者を呼びたいなら、ありのままの暮らしを知ってもらうほうが近道かもしれません。

 かつては来賓を呼んで盛大に開催していた「冬まつり」や夏の「運動会」でしたが、コロナ禍を機に見直し、今ではあまり手をかけず、簡素なスタイルにシフトダウンしました。まずは住民が楽しむこと、無理なく続けられることが大事だとわかってきました。

 映画『にぎにぎ川谷』の中で、いつも元気な松浦チヨ子さんが、父ちゃんを亡くして涙ながらにこう言います。

「なんともない生活が幸せだったんだね。華やかでなくとも、平凡に暮らせることが一番幸せかなーと思う」

 わざわざつくらなくても、川谷もよりには魅力がたくさんあります。気負うことなく普通に暮らす姿そのものが、一番の魅力なのだということを、最近改めて考えるようになり、私自身、少し肩の力が抜けた気がします。

『にぎにぎ川谷〜百年物語〜』の1シーン。ハサ掛けされた稲束と洗濯物。なんともない暮らしが美しいと思う。オンライン視聴やDVD購入が可能。
https://note.com/shinchoryu/n/nba70cbe716f6

\\ まだまだ参加申込み受付中!詳細は、下のバナーをクリックしてご覧ください。//


『季刊地域』の執筆陣が語るセミナー 第1回は、2025年10月23日に開催しました

第一回目の「季刊地域」セミナーでは、和歌山県に移住し、地域資源を活かしたグミの開発やキャンプ場オープンに挑戦する猪原有紀子さんを講師にお招きし、地域マーケティングについて、お話いただきました。
三兄弟の母としての暮らしと、地域ビジネスを両立する姿に注目が集まっています。

セミナー参加者の声(アンケートより)

素晴らしかったです…!営業とマーケティングの違い、マーケティングファネルのことなど、とても明確で明快に説明してくださり、とてもわかりやすく刺激的でした。やはりWebマーケティング会社での勤務経験や、グロービスで経営を学ばれた強みが、最短で結果を出せる力につながっているのだなと思いました。質問にもとても誠実に答えてくださり、共感を呼ぶことでファンを増やしていくことができる、天性のものも兼ね備えた方であると感じました。素晴らしい方を発掘(?)されましたね。(ご本人からの営業だということなので、”発掘”ではないかもしれませんが…)(広島県・Mさん)
地方で挑戦するあなたへ 地域マーケティング入門 (猪原有紀子さん)~『季刊地域』セミナー#1
地域の再生と創造のための課題と解決策を現場から!地域をよくしたいと思う人たちのためのむら・まちづくり総合誌『季刊地域』の執筆陣が語る全2回セミナーの第1回目です。講師は、同誌の人... powered by Peatix : More th...

(近日中に、アーカイブ版の配信があります)

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