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最新号より試し読み季刊地域Vol.66(2026夏号)

栃木

【草刈り隊】定年退職農家が活躍 ハンマーナイフモア2台で年間200km

草刈り隊

栃木県が普及に力を入れる「新しい形の草刈り」。そのポイントは、人員を確保し作業労力を軽くした「草刈り隊」を結成することだ。県内3カ所の草刈り隊の活躍ぶりを聞いた。
*Webでは栃木県那須烏山市の記事をご紹介します

取材対象:栃木県那須烏山市・荒川南部地域保全会

『季刊地域』66号(2026年夏号)「定年退職農家が活躍 ハンマーナイフモア2台で年間200km」より

隊長は82歳、副隊長71歳

 山際のアゼ道に響くエンジン音。鮮やかなオレンジのビブスを着けた男性が2人、自走式のハンマーナイフモア2台をゆっくり進ませる。

「けっこうきれいになるもんでしょ」

 案内してくれた平野育男さんが、機械が通った跡を指さした。

 2台の機械で農道の草を刈るのは、那須烏山市の多面的機能支払活動組織(*)・荒川南部地域保全会「草刈応援隊」(以下、草刈り隊)、隊長の伊澤和一さんと副隊長・藤田重美さん。

「伊澤隊長は82歳。藤田副隊長は私と同級で71歳です」

 2人の年齢を強調する平野さんはちょっと誇らしげだ。平野さん自身は、荒川南部土地改良区の事務局長で、土地改良区も構成員となっている保全会でも事務局の役割を果たす。それに草刈り隊のメンバーでもある。

荒川南部土地改良区事務局長・平野育男さん
荒川南部土地改良区事務局長・平野育男さん

 荒川南部地区は4集落からなる。農道の草刈りも堀さらい(水路掃除)も集落ごとに多面の活動で行なってはいるが、農家の減少で草刈りに手が回らないところが増えていた。とくに、地域に多く残る未舗装の農道と土地持ち非農家の耕作放棄地だ。草ぼうぼうの農道では、路肩の端がわからず田んぼに車を落とす事故も起きていた。そこで2023年3月に草刈り隊が発足した。

「隊員は平日に動ける人。農業を少しやりながら、ふだん家にいる定年退職者を中心に、個別に意向を確認しながら集めました」と平野さん。平日に絞ったのは、もともと土日に多い保全会の他の活動と重ならないようにしたのと、若い現役世代は休日は休みたいだろうと思ってのこと。隊員は60~80歳代の10人ほどだが、年4回の草刈り期間にハンマーナイフモアを走らせるのはもっぱら伊澤さんと藤田さん。草刈り作業の計画と進捗管理は土地改良区が行なう。

*農用地、水路、農道等の地域資源の保全管理を目的に2014年に始まった直接支払い型の交付金制度。農地の担い手を支援する側面が大きく、農家以外の住民も加わって活動組織をつくる。農地維持支払と資源向上支払という二つの交付金がある。

草刈り隊
荒川南部地域保全会「草刈応援隊」隊長の伊澤和一さんと副隊長の藤田重美さん(奥)

ハンマーナイフモアを選んだ理由

 栃木県が打ち出す「新しい形の草刈り」の柱は二つある。

 一つは「地域が一体となった人員の確保」。農家の減少が避けられないなかで、非農家を巻き込んだ体制づくりを提案する。荒川南部の草刈り隊メンバーも、伊澤さんや藤田さんのような定年退職後に小さい農業を続ける人のほか、農地を担い手に預けて土地持ち非農家となった人もいる。

 そしてもう一つの柱が「高機能草刈り機の導入による作業労力の大幅な軽減」。荒川南部では、22年と23年に分けて「多面」の交付金を使ってハンマーナイフモアを2台(当時は1台約40万円)購入し草刈り隊を発足させた。

 草刈り機には、刈り刃が横回転して草を刈るロータリ型と、多数のフリー刃が縦回転するハンマーナイフ型がある。荒川南部で購入したハンマーナイフモアは刈り幅が65cm。2台が並んで往復すると、幅が約2.5mある農道の草をきれいに刈れる。また、草を細かく粉砕するので、刈った草をそのまま放置しても刈り跡がきれいだ。その後にトラクタで耕す場合は草をきれいにすき込める利点がある。

 ただし、石があると機械の前に飛ぶので、2台は横並びか5~10m離れて同じ方向に向かって刈るようにしている。

 今年度は、やはり交付金を使って乗用草刈り機を購入する予定だ。これは主に耕作放棄地で使う予定という。現在使うハンマーナイフモアは7馬力あるが、効率よく使うには比較的やわらかい夏の草向き。その点、乗用草刈り機はロータリタイプで約100万円と値が張るものの20馬力近くある。2mのススキが繁るやぶにも突っ込んでいけるそうだ。

ハンマーナイフの 刈り跡は草が細か くなりきれい
ハンマーナイフの刈り跡は草が細かくなりきれい(「草刈り隊 人と機械の力を結集する新しい草刈りのかたち」より)

ハンマーナイフモア 共立HR665(やまびこ)
刈幅:650mm 刈高:20~80mm
能率:最大23a/時 最大出力:7.9馬力

「田んぼ公園」保全が活動の源

 草刈り隊は4集落をまたいで活躍する。24年度の記録では、ハンマーナイフモア2台の走行距離の合計は農道で135km、耕作放棄地などで65kmにもなった。合わせるとちょうど200km! これは東京と宇都宮を往復する距離にあたる。

 伊澤隊長と藤田副隊長はペアで仕事をする。1人だとつまらない作業も、2人だと楽しいしやる気が出る。急に体調が悪くなったりケガをしたときも2人態勢が安心だ。

 お二人はまだまだ元気そうだが、次の隊長・副隊長が生まれる仕掛けもある……

草刈りやりたい!人たち」のコーナーには以下の記事も掲載されています。ぜひ本誌でご覧ください。

  • 草刈り応援隊はなぜ始まった? 島根県雲南市宇山集落
  • 棚田オーナーのガチ勢も草刈り 新潟県十日町市・多田朋孔
  • 自給家族に草刈りを楽しんでもらう 愛知県豊田市・鈴木辰吉
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