10年前から、山の休耕地をお借りして農作業を楽しんでいます。仕事帰りに通うのが日課で、米や野菜づくり、果樹の植え付け、草刈り……初めて体験することばかりです。ひょんなことから昨年、土地の所有権を譲ってもらい、これまでとは違う体験もすることとなりました。高さ2.4mの段畑の石積みが少し膨らんでいるみたいです。このままだと、いずれ崩れるかも。修復しないと!
桧山敏夫(広島県海田町)
試行錯誤「石積み学校」に行きついた
膨らんだ部分の土を畳2枚分くらいの広さで掘り下げて、その土を下段の畑へ落としてやれば、高さ80cmの段々畑に変わる。使い勝手も見映えもよくなるのではと思って、数日間作業してみました。けれど、体力的にきつくて、当初の期待は薄らいできました。
そんな時、真田純子先生の『誰でもできる石積み入門』(農文協)で「石積み学校」を知りました。石積み学校は、崩れかけた石積みを実際に修復しながら技術を学ぶ場です。電話で相談すると、私の段畑で開催していただけることに。
しかし、これで一安心、とはなりませんでした。石積みの膨らんだところのほとんどは10~15cm程度の小柄の石が積み重ねてあります。これらに代わって「積み石」となる大きめの石を補充する必要があるとのこと。
幸い、職場近くの畑の隅に古い石積みを崩した石の山があったので、譲ってもらい軽乗用車で少しずつ運びました。1個10~20kgです。「ぐり石」になりそうな小さめの石は雑袋に入れて運びました。石集めは大変!
石積みを崩すことから
快晴の5月18日、石積み学校に全国から19人の方が参加してくれました。駐車場で石積み学校の金子玲大さんから石積みの基本の話を聞いてから現地に移動。石積みの状態を確認して作業の流れが決められました。
いよいよ石積みがスタート。上から順に積み石を外してゆきます。ゴム引き手袋を使用するのがいいですね。小さな石ならそれほど問題ありませんが、大きな石には注意が必要です。「ツル」「しょうせん」を使って石を動かす時、手を挟んだり、足に落としたりしたら大ケガをします。
運ぶときには身体全体を使って慎重に。焦る必要はありません。金子さんが手本を見せて指導してくれます。小さな石と大きな石とはグループ分けして置く。
外した積み石の山ができました。次は土を削る作業です。ここの石積みには、ほとんどぐり石が使われていないようなので、「じょれん」で削り落として「てみ」に入れ、バケツリレー方式で運ぶ。少しずつでお願いします。足元が悪いところで動き回るよりは安全に作業が進みます。
休憩を挟んで役割交代。後ろで見ていた人、前に出て土を削り落としてください。土の壁が少しずつ削られ、運ばれて、小山になりました。午前中の作業が終了です。
いよいよ石を積む
昼食後は石積みです。大きめの石を先に置いていくと構造的に安定するし、作業の面でも楽になります。石の形を見て、どれが石積みの表面にくる「顔」になるのか、前後、上下、左右を判断するのが難しい。丁寧に置いても、金子さんの一声「やり直し」。ひっくり返しても「やり直し」。繰り返してゆけば身に付いてきます。
積み石を置いたらぐり石で固定し、積み石が1段できたら、てみに集めたぐり石を奥に一気にザザッと放り込んで固めていきます。
胸の高さくらいまで積み上がってきたら「あゆみ」と呼ばれる足場板に乗って作業します。足元に注意すれば大丈夫。
ぐり石が残り少なくなってきたので、上のほうは、積み石を固定したら奥には土を入れて締め固めます。最後の「天端石」を置いたら、石が隠れるように土を多めに被せて盛り上げておきます。石積みの背後に水が浸み込むのを防ぐためです。これで石積みの修復作業が完了しました。
他の段畑も修復できた
5月19日快晴。本日の作業はぐり石の運び込みから始まります。隣町から石積み学校に参加した方が、2018年の西日本豪雨災害で集積された石を使えると教えてくれました。昨日、軽トラックで運んで道の側に降ろしてあり、雑袋に入れてあるのでバケツリレー方式で難なく終了しました。
この石を使って、昨日直した段畑の1段上の石積みを修復することに。高さ1m20cm×幅2mの出っ張っているところを「根石」から積み直して左右の積み石の面と揃えます。
大きな根石は、持ち上げて運ぶのではなく「しょうせん」を使って這わせるように動かしたり、立たせて歩かせるようにして運びます。昨日とは少し違う作業でしたが修復は12時に完了しました。
今回の石積み学校では、石積みを修復できただけでなく、休憩や昼食時に木陰で談笑したこと等たくさんのすばらしい経験をさせていただきました。金子さん、19人の参加者の皆さん、ありがとうございました。