ホーム / 試し読み / 季刊地域No.62(2025夏号) / ソーラーシェアリングは地域課題に応える技術
季刊地域No.62(2025夏号)ゆるくらジャーナル

福島

ソーラーシェアリングは地域課題に応える技術

全国をまわる農文協職員が集めた元気な活動の数々をご紹介します。「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む各地の耳寄りな情報です。

ブドウの棚。架台の支柱に穴を開け、ワイヤーを張った

 近藤恵さん(46歳)は有機農業を志し2006年に二本松市で新規就農するも、5年後に東日本大震災に遭遇します。そこからエネルギーの自給に関心を持ち、21年に二本松営農ソーラー株式会社を設立。耕作放棄地6ha一面にソーラーパネルを設置して、ソーラーシェアリングに取り組んでいます。売電収入は1年間で1億3000万円ほどです。

 圃場は小高い山と小さな川に挟まれており、大きな石がゴロゴロと出る、いわゆる条件不利地。以前は田んぼだったそうで、長年放置されていました。

 ソーラーパネルの支柱は高さ3m。近藤さんはその間隔を、パネルの下で育てる作物に応じて2.85 mか3.25mにしています。

 前者は遮光率が35%となり、ここではエゴマを栽培。後者は遮光率が25%と小さくなるので、エゴマより栽培に光が必要な小麦やブドウ、イエローマスタードをつくります。ブドウはパネルで適度に日光が遮られ、着色不良が出にくいメリットがあるそうです。

 さらに川に面していて石が多く、細長い畑では、ホルスタインやジャージーを肥育用に4頭放牧。土地を有効利用しながら夏場の雑草対策に役立てています。

 ソーラーシェアリングはエネルギー自給や耕作放棄地といった地域の課題に応える技術だと、近藤さんは力強く語ってくれました。

文=橋本和徳(農文協)

この記事をシェア
農文協 編
特集:有機農業 点を面にする
農文協 編
「小さいエネルギー」とは、太陽光や水力、薪・炭など、身の回りの自然を使って、自分でつくる電気や熱、動力などのエネルギーのこと。太陽光はもちろん、水や木がふんだんにある農山村は、食料だけでなく、エネルギーも生み出す力と技がある。本書は、そんな農山村の暮らしに学ぶ小さいエネルギー自給の知恵や技が続々登場!太陽光でオフグリッドの暮らし、太陽熱で干し野菜・ドライフルーツを簡単につくる、手づくり水車で電力自給、薪&炭で豪快な野外クッキングなど、小さいエネルギーを自分でつくる暮らしは、自然の恵みを実感でき、きっと痛快なはず。
タイトルとURLをコピーしました