静岡市茂畑(もばた)の杉山正明さん(63歳)は「もばた文化塾」の代表。高齢化や子供の減少で集落の行事の維持が難しくなるなか、26年前に結成されたこの組織がむらの文化を守っています。
青年団がなくなり開催されなくなった祭りを継承したことがきっかけでした。以来、子供会でやっていた祭り、どんど焼きのような地域の行事の企画・運営を文化塾のメンバー27人が担っています。
祭りには以前は地区外の人も集まりましたが、コロナが流行り始めてから茂畑の人だけで「もばた祭り」を11月に開催するようになりました。この祭りの特徴は、地域の人の趣味を展示するコーナーです。絵画や魚の剥製、魚拓、ドライフラワー、キクの展示……。
「長年、近くに住んでいるのに、この人はこんなものが好きだったのかと驚いた。茂畑だけの祭りにすることで、住民が熱中しているものや好きなものを展示することができた」と杉山さんは言います。耕作放棄地の解消のために育てたソバを使った手打ちそばの試食会もありました。
営業で農村を回っていると、昔からある行事がなくなるのはさみしいという声をよく耳にします。もばた文化塾のように、集落の文化と人を縦にも横にもつなぐことができるといいなと思います。
(農文協 多田 勇慈郎)