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集落試し読み季刊地域vol.49(2022春号)

新潟

クロモジ、ヨモギ 簡単・安全、高齢者も障害者もつくれる|使い切れない農地が宝に変わるアイデア Vol.2

遊休農地の解消に向けて粗放的な農地利用が広がっている。ポイントは手のかからない品目選びと商品化のアイデア。22年春号「どうする?使い切れない農地 part2」で好評だった品目ガイドから3本ピックアップして紹介する。

執筆者:家老洋(新潟県長岡市・NPO法人UNE代表)

『季刊地域』2022年春号(No.49)掲載「簡単・安全、高齢者も障害者もつくれる」より

棚田で米づくりを始めたが……

 NPO法人UNEは2011年、農園芸による障害者の仕事おこし、高齢者の生きがいづくりなどを通して中山間地域を元気にしようという目的で設立しました。現在、職員8人、市民ボランティア(障害者等含む)5~10人で活動しています。

NPO法人UNEのメンバー。右端が筆者

 新潟県長岡市栃尾地域は昔からおいしい米の産地で知られています。私たちの活動も棚田の米づくりから始まりました。地元の農家から田んぼを借りて面積は計1.4haまで増えましたが、素人の農業なので悪戦苦闘の連続です。米価は下がり続け、イノシシなどの獣害も頻発。稲作の継続がしだいに難しい状況になってきました。

7aの遊休田にクロモジを移植

 日当たりが悪く、生産性の低い山際の田んぼを使って何かできないかと考えていたところ、周辺の山々にクロモジが自生していることがわかりました。クロモジは「養命酒」の原料になる木です。養命酒(株)と生木の買い取りの話がまとまり「クロモジ採取事業」がスタートしました。15年のことです。

 その3年後には「くろもじ工房」を開設し、養命酒に年間2tの生木を出荷する傍ら、150kgほどのクロモジの枝葉を使った茶や香水(ミストスプレー)の製造・販売も始めました。クロモジ茶は、細い枝を洗浄・乾燥・細断した「枝茶」と、葉を使った「葉茶」の2種類。価格は1箱(ティーバッグ5袋入り)750円です。こうしたクロモジ関連商品の売り上げは年間200万円ほどになります。

 16年からは、山で採取したクロモジ苗を7aの遊休田に800株ほど移植し、栽培にも取り組んでいます。クロモジは獣や虫が寄りつかないうえ、植え付けから1年半後には背丈が50cmを超えるほどに生長したので除草も不要でした。5~6年で収穫できるので、昨年、春から初夏にかけて葉を採取し、葉茶の原料に使いました。今後はしっかり剪定して多くの葉がつくようにし、葉の採取圃場として活用したいと考えています。

出荷前の状態

育苗ハウスで乾燥ヨモギに

 もう一つの事業の柱が、18年から薬草酵素メーカーと始めた健康飲料用ヨモギの契約栽培です。

 1年目は、モグサの産地からヨモギ苗を1000本購入し、13aの遊休田に移植しました。苗の植え付けは9月末~10月末、収穫は翌年の梅雨明けから9月末までになります。刈り払い機で豪快に刈ってから回収し、乾燥、細断、袋詰め・出荷となります。

 春先に10a70kgの鶏糞または汚泥堆肥70kgを入れることでヨモギが繁茂し、他の雑草はあまり生えなくなりました。少しずつ栽培面積を増やし、昨年は40aで乾燥ヨモギ約1tを出荷しました。

 作業で大事なのは、ヨモギをしっかり乾燥させることです。UNEでは、JA越後ながおかから水稲育苗ハウスを6~9月の間、間借りさせてもらい乾燥施設として使っています。また、葉っぱ専用の乾燥網台も考案しました。網の下から空気が入るので、地面に敷いたシートの上で乾かすのに比べ、まんべんなく速く乾燥します。

水稲の育苗ハウスを間借りしてヨモギの乾燥施設に利用。矢印が、防風ネットをロープで吊った乾燥網台

 昨秋はイノシシに荒らされた田んぼや水持ちの悪い田んぼなどにもヨモギを移植し、今年の栽培面積は50aに拡大します。乾燥ヨモギ1.5t、10a当たり20万円の売り上げを目指します。

ヨモギ畑では梅雨明けから収穫が始まる

誰でも携われるのもメリット

 クロモジとヨモギに共通しているのは、稲作に比べて生産コストがかからないこと、日当たりが悪かったり、水が来ないような遊休田でも栽培できることです。イノシシやサルなど獣害の心配もほとんどありません(当地にはシカは出ない)。

 また、機械をあまり使わないので、簡単かつ安全、大勢で作業できるのもメリットです。UNEに集う障害者や高齢者など、誰でも容易に携わることができます。さらにメーカーによる全量買い取りなら工賃アップにもつながるので、農福連携にピッタリです。そんなことから当方では、クロモジとヨモギ関連の事業を「ノウフク・ジョブ」と呼びます。


『季刊地域』2022年春号の「農地の粗放的な利用 品目と使い方」コーナーには、全19品目についての記事が掲載されています。ぜひ本誌または「ルーラル電子図書館」でご覧ください。

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