地元書店の廃業で書店がゼロになった留萌市(人口2万4000人)に2011年7月、「留萌ブックセンターby三省堂書店」がオープン。住民の熱烈な招致と道留萌振興局の支援により、「商圏30万人が大手書店の出店条件」という業界の常識を破る異例の出店が話題となった。

 店長を任されたのは、閉店した地元書店に長く勤めた今拓己さん。「お年寄りは手帳や暦など時期もんを喜んで買ってく。毎年楽しみにしてんのさ。そういう人に『元気? また顔出してね』って言ってるわけよ」

 これからは、こうした高齢者のリピーター客を大事にしていくことが地元書店の役割と考えた今さん。2012年から常設となった「まちなかブックカフェ」もその取り組みのひとつだ。今さんは商店街振興組合と市が運営する「るもいプラザにぎわい広場」の一角にテナント料を払って図書コーナーを設置。利用者がゆっくりくつろげるように丸テーブルと自動販売機を置くことにした。

ブックカフェの図書コーナーの本は200冊ほど。
誰でも自由に閲覧することができる

 留萌ブックセンターは、ここで2カ月に1回、出張販売を行なっており、普段、バス待ちにブックカフェを利用するお年寄りたちの楽しみになっている。郊外の留萌ブックセンターまで足を運ぶのはたいへんだけど、まちなかブックカフェなら、散歩のついでに本が買えると好評なのだ。

 また、ブックカフェには本の注文書も置いた。書名と連絡先を書いておけば、今さんたちが定期的に注文書をチェックして商品をにぎわい広場の職員に預けておく。郵送ではなく、あえて受け渡しにこだわったのは、送料がかからないだけでなく、高齢者が家から出て歩くことで健康になってほしいという思いからだ。

 出張販売はにぎわい広場の運営にとってもメリットがある。100円ショップや衣料品店、たい焼き屋など他のテナント店にも、ブックカフェを利用する高齢者のリピーター客が立ち寄っていくようだ。

「どこにでも出かけ、子どもからお年寄りまで本に親しんでもらう努力が書店には必要だと思う」と今さん。出張販売の今後に期待だ。

留萌ブックセンター by三省堂書店
〒077-0014 北海道留萌市南町4-73-1
電話0164-43-2255

文=農文協北海道支部 安藤啓太

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