このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

神田神保町の老舗書店東京堂で
高橋源一郎・内山節対談ふたたび

編集部


写真提供=週刊読書人

東京から 前号に掲載した「内山節著作集発刊記念特別対談」でそれぞれ1950年、51年生まれの「ほぼ同級生」であることがわかった作家の高橋源一郎さんと哲学者の内山節さん。初対面ながら、「世界全体を説明することよりも、自分が知っているコミュニティを中心に照らすことさえできれば、とりあえずそんなに間違えないでやっていける」(高橋さん)と、3・11後の新しい「小さな共同体」をめぐって意気投合したふたりが、今度は公開トークセッションを行なった。企画したのは開業124年を誇る老舗書店東京堂。8月26日、神保町店6階のホールに集まったお客さんは約100名と満員の大盛況だった。

 地方でのテレビ番組の収録を終えて東京駅から駆けつけた高橋さんは、代々木ゼミナールの教室7割閉鎖を、高度経済成長期から人々が延々と信じ込んできた「浪人してもよい大学に入れよう。そこに輝かしい未来が待っている」という神話から解放された証しとして、肯定的にとらえる。いっぽう内山さんは、いまの日本の政治の場では、それとは裏腹に成長神話を信じ続け、より強い論理と明快な経済合理性を追求しようという勢力が力をもっているという。それに対抗するには、日本社会が伝統的にもっていた「曖昧さ」の価値を見直し、弱さや多様性を認めること。そして「言葉にできにくいもの」を聞き分けること。現実にそういう動きが若者を中心に各地で起きていることを確認したところでお開きに。ふたりの対談はまだまだ続きそうな気配である。

※高橋源一郎・内山節トークセッションは『週刊読書人』9月19日号に詳しく掲載されています。

セブン-イレブンに直売所
地元の人も買いやすいみたい

水野研介


セブン‐イレブン内の産直コーナー

新潟から 新潟市南区の直売農家、土屋東夫さんの家の目の前にあるセブン‐イレブン新潟戸石新田店は、他の店舗とちょっと違います。店の奥にミニ直売コーナーがあるのです。土屋さんは昨年8月から小学校の同級生4人と一緒に、毎日ここに採れたての新鮮野菜を出荷しています。

 セブン‐イレブンの敷地は土屋さんの土地。もともと地元の農家が自由に出荷できる100円野菜の直売所を建てたいと思っていた土屋さんは、セブン‐イレブンの元農協職員のオーナーに「駐車場に直売所をつくれないか」と相談していたそうです。ところが後日、オーナーから「ここに野菜を並べてみませんか」と案内されたのは店の一番奥、カップラーメンの並んだ棚でした。ちょうどタイミングよく、セブン‐イレブンの本部の人が来て、すべて話したところ、了承も得られたそうです。

 野菜を出し始めてみて驚いたのは、買っていく人のほとんどが地元の人。知っている人がつくる野菜なので安心ですし、コンビニに置いているのでいつでも買えてとても便利。朝出荷されるのを店の前で待っている人もいるほど大人気で、月10万円近く売る仲間もいるとか。来客数が増えたことでセブン‐イレブンの店舗の売り上げもアップしました。

 野菜の値段は50~200円。売り上げは、20%を引いた額が10日に1回、現金でまとめてコンビニから土屋さんに支払われ、土屋さんが各自の納品書を見ながら仲間に分けます。土屋さん曰く、コンビニでは使いきれる少量パックで売るのがコツだそうです。

針葉樹の間伐材活用
インディアンサウナが最高!

屋宜菜々子


左・インディアンサウナの骨組み。20人ほど入れる 
右・インディアンの伝統的住居ティピ

岐阜から 高山市で間伐材の有効活用を目指す「飛騨・高山森守クラブ」は、昨年秋に第1回「山の恵み感謝祭」を行ない、30人ほどが参加しました。間伐材や山菜、獣肉など、山の恵みをフル活用しようというこの祭り。インディアンと生活した経験のある副代表・設楽剛さんの計らいで、インディアンの伝統的住居「ティピ」とインディアンのサウナも建設されました。

 ティピは山から採ってきた10本ほどの長い竹を円錐状に組み、その上に専用の布を被せてつくります。上部が開いているので、中では薪を燃やすこともできます。時には薪ストーブも焚き、山菜の天ぷらをつくってビールで乾杯。山々に囲まれた自然の中で、至福のひとときを過ごします。

 また、サウナは細めの竹でドーム型の骨組みをつくります。骨組みの上には毛布など断熱性のある厚めの布をかけて、中央に置いた焼石に水をかけて蒸気を発生させ、その熱で温まります。これはラコタ族に伝わる「スウェットロッジセレモニー」という浄化の儀式だそうです。このとき使う焼石をつくるのに、燃やすと一気に高温になる針葉樹の薪がぴったり。石の上に薪を載せて燃やせば、あっという間に出来上がります。

 ティピは「誕生日会に使いたい」など、需要があるそうで、現在2つ目の建設を計画中。代表の小林光雄さんは、次は竹でなくヒノキやスギの間伐材でつくれないかと考えています。

飛騨・高山森守クラブ
電話090‐4263‐1892

学校まわりになんと37種類!
児童全員でカメムシ調べ

水野隆史


カメムシかるた。読み札にはそのカメムシの特徴が書かれている

岩手から 農作物を荒らしたり、ニオイで厄介モノのカメムシ。そのカメムシを「大好き!」「学校の宝物」と児童が言う小学校がありました。葛巻町立江刈小学校。児童数27人の小さな学校ですが、町の畜産公社の協力でヒツジの飼育をしたり、100年以上歴史のある学校林で活動したりと、子どもたちの野外活動が盛んです。

 校長先生の呼びかけでカメムシ調べに取り組み始めたのは昨年4月から。子どもたちは興味を持ち出すと、学校のまわりや通学の行き帰りで次々といろいろな種類のカメムシを発見。なんと、当初の予想を多く上回る37種類も採集できました。

 廊下に飾られたカメムシの写真一覧を見ていると、子どもたちが発見したときのことをいろいろ教えてくれます。また、37種類のカメムシの特徴をまとめた『江刈カメムシ図鑑』もできていて、それぞれ採った場所や採った人のコメントが載っています。『カメムシかるた』もつくり、カルタ大会を開いて盛り上がったそうです。

 今年の2月には、図鑑をつくる際に参照した『日本原色カメムシ図鑑』の編集に携わった研究員が学校へ来てくれて、「カメムシシンポジウム」も開きました。児童や家族、地域の人など70人が参加して、カメムシのおもしろい生態をみんなで学習したそうです。

 今年度も活動は継続中。子どもたちは採集容器片手に、まだ図鑑に未掲載の「新種」を探して頑張っています。

葛巻町立江刈小学校
電話0195‐66‐3475

離農した酪農家の土地で
耶馬溪うどんが復活

伊藤照手


稲作農家のコンバインでムギを収穫する

大分から 下郷農協の売店に並ぶ中津市耶馬溪産・無農薬栽培の小麦でつくった「耶馬渓うどん」。これはじつは2代目で、初代「耶馬溪うどん」は10年ほど前に販売が中止されてしまっていました。地元で小麦をつくる人が減ってしまったのが原因です。

 地元産のこだわり小麦でつくる耶馬溪うどんをもう一度復活させたいと集まったのは、下郷農協の参事・松本聡雄さんを中心に、有志7名(農協職員4名と地域の農家3名)。3年前から標高400mの鎌城集落で小麦つくりが始まりました。圃場は離農してしまった酪農家の牧草地だった1・5haの畑。機械はメンバーが提供して、元酪農家も仲間に加わりました。

「牧草地をこのまま放っておくのはもったいない」「酪農をやめると地元農家との接点がなくなっていくから一緒に何かできないか」。また、「モノづくりに農協の若い職員も巻き込むことで、生産の最初と最後を経験させてやりたい」。耶馬渓うどん復活の裏には様々な思いがあり、そうした思いに賛同する人が作業を手伝ってくれたりしたそうです。

 最初はうどん専用品種の「チクゴイズミ」だけでしたが去年からパン用品種の「ミナミノカオリ」も作付け、農協でパンを製造・販売できないかと試作中です。また、今年は新たに「耶馬溪素麺」も商品化、売り上げも上々です。さらに裏作の無農薬ダイズやソバも加工して販売できないかと考えているようです。場所があり、仲間がいればいろいろなことができそうで、夢が広がります。

下郷農協
電話0979‐56‐2222

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