行橋駅から車で10分、細い山道を抜けた先に、絵本の専門店「瓢鰻亭(ひょうまんてい)・ひまわりこども」がある。蔵造りの家屋の1階には、店長の前田賤(しず)さん(67歳)が厳選した8000冊の絵本や児童書が並び、板張りの床に寝そべった子どもたちが読書に夢中になっている。

35年前、行橋駅前に「ひまわり書店」を出す前は、地元有志と週2回、子どもの寺子屋を開いていたという前田さん。当時はベトナム戦争の最中、駅の周辺には軍事基地があり、子育てにも不安な状況だった。

ある時、寺子屋の男の子に『もりのなか』という絵本を貸したときのこと。「なかなか返ってこないと思ったら、本がボロボロになって戻ってきたのです。怒るよりも何度も読み返してくれたことがうれしかった」。よい本との出会いが子どもを変えると、前田さんは絵本専門店を開いたのだ。

店の2階は展示会やコンサートもできるオープンギャラリーに

1996年、店を自宅に移転してからは5人のスタッフと切り盛りしている。図書の装備や発注を担当する牛島正代さん(43歳)は、小さい頃から本が大好き。高校生のとき「ひまわり書店」に通っていたことが縁で、週3回手伝いにきている。学校の外商やブッククラブを担当する神田輝代さん(34歳)は、豊前市から車に乗って子連れで出勤。かつてのお客さんが子育て世代となり、今では瓢鰻亭の中心となって活躍している。

前田さんのこだわりは、書店業を通して出会いの場を提供すること。保育所や小学校、病院を巡回するついでに、知り合いの有機栽培農家も紹介。給食の食材納入がはじまったこともある。1階のカフェでは、地元農家から食材を仕入れてランチを提供、農産物も店内に並べて販売している。

年4回の「野菜パーティー」は、農家と消費者を結ぶ出会いの場

また、近隣の産婦人科の看護師を招き子育て相談の日や、「子どものリバーシブルベストを作ろう会」などのイベントも開催。リピーターも増えてきた。「本の販売にはなかなか結びつかないのよね」と笑う前田さんだが、いま地域の人の輪は着実に結びついている。

瓢鰻亭・ひまわりこども
〒824-0121 福岡県京都郡みやこ町豊津326-1
電話 0930-33-8080 http://sunny-himawari.ciao.jp/

文=農文協九州沖縄支部 吉瀬正彦

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