このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

農家とカフェとペットショップ
異色の3人が古民家をシェア

寺元和矢


古民家縁

静岡から
 2015年に脱サラし、1年の研修を経て17年に新規就農した裾野市の勝又純也さん。建設中のハウスに近いところで、イチゴのパック詰めや出荷作業をする場所を探していました。
 そこへ「一緒に物件を借りませんか」と声をかけたのが、カフェを営む渡辺さん。店が手狭になり、新しい場所を探していたところでした。勝又さんのイチゴを菓子にして渡辺さんのカフェで出そうということにもなりました。
 渡辺さんの知り合いに、フクロウ専門のペットショップを構えようとしていた秋山さんがいました。秋山さんは、勝又さんのイチゴハウスから車で2〜3分のところにある古民家の持ち主と知り合いで、この家を3人でシェアすることに決まりました。
 大工仕事もできる秋山さんが中心になり、2カ月かけて家をリフォーム。古民家の雰囲気を残しながら、トイレ・電気・水道・内装にいたるまで修繕・改修しました。
 こうして9月、「いちごの里」「おひさまカフェ」「ふくろうの小屋」の3事業者が入った「古民家縁」がオープンしたのです。
 勝又さんは、30aのハウスでこの11月についに初収穫を迎え、古民家でイチゴのパック詰め作業が始まりました。まもなくイチゴの直売所としても稼働するとのこと。また、いずれは菓子製造業の許可を取り、イチゴを使ったスイーツの加工所にもしたいと考えているそうです。

小ロットでもOK
わが家の牛乳をバターにして販売

我満夏希


おらげバター

栃木から

 5軒の酪農家からなる市貝町酪農組合の婦人部。2017年初め、県内(那須町)の観光牧場「森林ノ牧場」からバターの受託加工を提案された。森林ノ牧場に牛乳を1L120円で売り、できたバター約40gを1g5円で買い戻す仕組みだ。「友達へのお中元にバターを贈れたらいいわね」と盛り上がり、大瀧博子さんと永嶋志保子さんの2人が話に乗った。
 最初は2人ともバターを販売するつもりはなかったのだが、この話を町長が聞きつけ、町特産の「おらげバター」として商品化することになった。町や県の補助金を使ってパッケージやのぼりをつくり、バターを使ったお菓子も開発して、3月には道の駅サシバの里いちかいで試作販売に至った。
 2人は毎月1回、牛乳を森林ノ牧場に持っていく。多いときは140Lの牛乳から5kg超のバターに加工してもらった。道の駅に並べたバターは毎回すぐに売り切れるそうだ。大瀧さんは、「わが家の牛乳がバターになるなんて最高の贅沢。牛乳を持っていく日は2人でランチして帰ってくるの」と楽しそうに話してくれた。
 なお、原料の牛乳に対してできるバターはわずかで、残った無脂肪乳は通常、脱脂粉乳に加工されるが、これは大規模機械による大量生産が前提。小ロットのバターづくりは採算が合わないとされてきた。森林ノ牧場は、この無脂肪乳を乳酸発酵させた飲料「キスミル」を開発、商品化し、小ロットのバター加工を可能にしている。

犬も遊べるドッグラン付き観光農園&カフェ

小森智貴


ドッグラン。後方にオリーブとブルーベリーの
苗木がある

静岡から
 静岡市の永野眞宏さんは、単身赴任中も「周りの荒れた茶園をどうにかしたい、農家を少しでも元気にしたい」と地元が気がかりでした。早期退職し、地元の野菜やシイタケでつくった料理を提供するカフェをつくろうと思い立ったのですが、お客さんが来てくれるかどうか……。
 そこで、人を呼ぶための仕掛けをカフェに併設することにしました。犬を遊ばせるドッグランと、お茶に代わる新たな基幹作物づくりをめざしてのオリーブ園です。
荒れた農地を借り、2017年9月に「ゴールデンドッグファーム」を夫婦2人でオープンしました。
 ドッグランは1100㎡と490㎡の大小二つ。休日には県外からも含めて50頭ほどのワンちゃんが遊びに来ています。カフェでは、地元のジネンジョを使った季節限定とろろご飯定食をはじめとしたメニューを提供。地元のお茶も販売します。
 オリーブはドッグランの周りに4m間隔で40本。「茶園跡の水はけがいい土地にオリーブは向いているのではないか」と期待しています。ブルーベリー20本も植えました。犬を遊ばせながらブルーベリーの摘み取り体験ができる観光農園にしようという考えから「ドッグファーム」と呼んでいます。
 今後はピクルスづくりやオリーブオイルなどにも挑戦したいそうです。

地あぶらに3度目の挑戦

荒井康介


転作地でエゴマを栽培

熊本から
 玉名郡和水町、約100戸が暮らす中山間地の上板楠集落では、50?haある水田を荒らさないよう、地域づくり協議会「みどりの里上板楠」を中心に、地あぶらに挑戦し続けている。
 2007年頃から菜の花緑肥稲作に取り組んできた。11年には、開通したばかりの九州新幹線沿線を美化する活動に県の補助が出たため、その沿線にも菜の花のタネを播いた。「せっかく菜の花をつくるなら油を搾ろう」と、同じ補助金で小型の搾油機(50万円)も導入したのだが、安定した量がとれず活動は低迷した。
 その後12年には和水町の町花ヒマワリを植栽。翌13年からヒマワリ油を搾ろうとしたが、収穫が大変で持続しなかった。
 17年からは約1haのエゴマ栽培と搾油を始めた。高齢者が増えてきたなか、エゴマがもつオメガ3脂肪酸などの健康機能成分に注目。健康づくりのための作物として、「1〜2aぐらいでいいから栽培し、自分の油を搾ってみませんか?」と地域住民に呼びかけた。
 エゴマはイノシシなどの獣害にあわないことから、この地に適した作物ではないかと「みどりの里」代表の佐藤博明さんは期待する。菜の花やヒマワリと同じ搾油機が使えるのもいいところだ。
 今後は、上板楠の住民以外でも、健康教室に通う高齢者など関心のありそうな人に広く呼びかけ、栽培者を増やそうと考えている。

年に一度はバーに早変わり
ワインとともにある市立図書館

香川貴文


「アサンブラージュと語る産地ワインの夕べ」

山梨から
 甲州市立勝沼図書館は、ブドウとワインに関する書籍数日本一を自負する図書館。入って正面のブドウ本ブースには関連書籍がずらりと並ぶが、司書の古屋美智留さんは「これでもまだ3分の1です」という。館内には、ブドウの栽培技術と歴史、品種、ワインの醸造方法などの資料が合わせて約3万点あるそうだ。職員手製の説明パネルも貼り出す力の入れようだ。
 この図書館、ブドウとワインに関する様々なイベントも開いている。4年前から毎年1回、2月に7人の若手醸造家グループ「アサンブラージュ」を講師に呼び、セミナー 「産地ワインの夕べ」を開催。この日は17時の閉館と同時に模様替えが行なわれ、図書貸し出しカウンターが試飲のバーに早変わりする。ワインによく合い家でもつくれる、地元野菜を使ったおつまみも提供する。2015年は80人も来場し、あまりに混雑したため、16年からは60人の定員を設けざるをえなかったという。
「食べるブドウ、飲むブドウ」「ワインの香り」といったテーマでブドウとワインの資料展も毎年開催。来場者には、ブドウ農家への取材記事なども載った手づくりのハンドブックも配布する。
 また、市内の小学校へ職員が出向き、ワインのつくり方などを紙芝居で教える活動も行なう。
 ブドウとワインへの熱い思いがほとばしる図書館なのだ。

雪室貯蔵の美酒はいかが?
酒好きと酒米農家でつくった法人

編集部


蔵びらき(5月)

山形から
 尾花沢市は米どころで日本酒をよく飲む地域だが、市内の酒蔵は酒米をほとんど外から購入していた。「これではいけない」と2011年、数人の農家が「おばなざわ酒米研究会」を立ち上げ、不可能といわれていた山田錦の栽培を成功させた。
 一方、市内には以前から「楽酒楽粋の会」という酒好きの集まりがあり、酒の飲み比べ会などを開いて楽しんできた。
 この酒米農家と酒好きが一緒になり、16年4月に組合員10名の「(農)ドメーヌ楽酒楽粋」を設立した。組合員農家がつくる18?ha分の山田錦を買い上げ、酒蔵に日本酒の製造を委託し、ネット販売する。酒販免許をとって販売主体となれるよう、また将来の農地取得も見越して法人化した。
 さらにその年の冬、2mも積もる雪を活用しようと、酒の雪室貯蔵を始めた。フォークリフト用のパレットを組んだ囲いの上に雪を除雪機で飛ばし、酒が300本入る程度の雪室をつくる。雪がなくなる5月までここで寝かせた酒は、角がとれてまろやかな味だという。代表の落合喜久男さんをはじめ、尾花沢の農家は皆、除雪のプロ。雪室づくりもお手のものだ。
 雪室やラベルづくりに必要だった100万円超の資金はインターネット(クラウドファンディング)で調達した。雪室貯蔵した酒のうち約50本は寄付してくれた人への返礼品として贈ったという。

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