小学4年のときでした。担任の先生が『天の岩戸のものがたりで活躍した力持ちの神様・天手力男命は、学校の隣の佐那神社に祀られていることが、日本最古の歴史書の古事記に載っているんだよ』と教えてくれました」
 小野孝男さんは、60年以上経った今でも当時のことを鮮明に覚えている。
 脱サラで地元に戻り、多気ブックセンターを開いたのは1995年。「ふるさとのよさを多くの人に伝えたい」と考えた小野さんは、本だけでなく店内で地元特産の伊勢イモも販売。その後は、地元由来のギフトや酒類も扱うようになった。
 たとえ知名度は低くても、いい地元産品に光を当てることがモットー。本以外の物販にも力を入れて書店の複合化を図ってきた結果、書籍、ギフト、酒類とも地域ナンバーワン店になった。

地元の酒蔵が醸した「天手力男山廃純米酒」や前川次郎柿の干し柿など、地元にちなんだ商品が次々に誕生。小野さんが執筆した『古事記 天手力男』と一緒に店頭で販売する

 さらなる転機は2014年、『古事記 天手力男』を出版したことだ。構想から5年がかりで、地元佐奈地区ゆかりの天手力男、天宇受売、曙立王のものがたりを『古事記』から抜粋。小学生でも読めるようにわかりやすく編集し、佐那神社と佐奈地区のパワースポットの案内も付けた。
 編集を進めるなかでふるさとをもっと盛り上げたいという気持ちが募り、地元の食材にも着目した。佐奈地区特産の前川次郎柿を商工会に頼んで干し柿にして販売。また、地元の相可高校の協力のもと伊勢イモのお菓子も開発した。
 自身がふるさとに戻り書店を開いたように、「次の世代にも地元で暮らしを創る仕事を起こしてほしい」と話す小野さん。これからも地元の魅力をどんどん発信していってほしい。

書店以外にもギフト店、酒屋を併設する複合店。「桜下村塾」は郷土のよさを知ってもらおうと、2017年に小野さんが塾長となって開設した寺子屋

多気ブックセンター
〒519-2181  三重県多気郡多気町相可1562-1
http://takibooks.com/
☎0598-38-4361
営業時間10:00〜19:00(年始は3日まで休み)

文=農文協東海北陸支部 三浦 渉

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