このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

高さ日本一!?
15m超のジャンボ門松

栗橋悠助


ジャンボ門松(宝満神社 大門松)。
1月末まで見られる

佐賀から
 唐津市の宇木地区にある宝満神社。ここに毎年11月下旬になると、直径2m、高さ15m超のジャンボ門松が出現します。つくっているのは、宇木うき村おこし会を中心とした地域の人たち。これだけの大きさとなると、地域が一体とならなければできない作業です。
 150戸ほどの宇木地区はもともと専業農家ばかりの農村でしたが、最近では多くが勤め人や兼業農家となり、地域のみんなで顔を合わせて何かする機会が少なくなってしまいました。だんだん地域の活気が失われていくー。そう感じた当時の区長さんが思いついたのがジャンボ門松づくりです。2018年11月に完成したもので15代目になりました。
 村おこし会メンバーの脇山久文さんに話を聞くと、材料集めから組み立てまではわずか1週間。地域内の竹林や山から伐採箇所を選び、地域住民みんなに作業の協力を呼びかけます。集めた孟宗竹や黒松はあらかじめ加工して束ねておき、大型のクレーン車で吊り上げて固定します。作業には毎回40〜50人が集まり、打ち上げまで大変賑やかに行なわれるそうです。
「最近は消防団の若い子たちも積極的に参加してくれる。門松づくりの技術を次の世代に引き継いでいきたい」と脇山さん。こういった地域の活動が集落で生活している人を結び付けていくんですね。

茶の実栽培で放棄茶園を再生
スキンオイルを商品化

荒井康介


茶の実から搾った「TEA OIL」
(10㎖ 2500円)

千葉・佐賀・岐阜から

 千葉県に本社を置く㈱緑門(下山田力社長)は、嬉野市内で茶の実を収穫し、油を搾って保湿力・浸透力抜群のスキンケア商品に加工しています。全国的に広がっている茶畑の耕作放棄対策へつなげて、茶業の新しい産業にすることを目指しているそうです。
 放棄茶園を借りたら、受粉して実が成るよう、別の品種の樹を植えるなどの畑づくりから始めます。10〜11月に実を収穫できます。葉の収穫や管理作業とはほとんど重なりません。
 17年には岐阜県揖斐川町にも園を借りて搾油所を開設し、自社園の面積は2〜3haになりました。なお、搾った油の濾過には佐賀や岐阜の伝統和紙を使うそうです。
 埼玉県、滋賀県など5カ所の法人や茶業協同組合など、提携生産者も増えてきました。それぞれ本業の茶葉生産の傍ら、近隣の放棄茶園を借りるなどして実を生産します。実のほとんどは緑門が買い上げますが、一部はこれらの法人等から緑門が搾油を受託する形で、地域特産品をつくろうという動きもあるそうです。
 全国の耕作放棄地となった茶園は茶の実の宝庫だと思います。
 近年の茶の状況は、一番茶・二番茶の価格下落や、三番茶か秋冬番茶を使用したペットボトル茶の台頭があり、生葉で勝負するのはなかなか難しいとのこと。そんななか、茶の可能性を葉だけに求めるのではない事例がじわじわ広がっていきそうです。

少人数での話し合いがカギ
みんなが納得する集落営農

吉田祐貴


収穫祭の様子

島根から
 安来市西松井地区にある(農)アグリ西松井(35ha)は、集落に27軒ある農家のうち25軒が加入しています。いまでこそ加入率90%を超えていますが最初は70%程度でした。「強引に農地を集約することはしたくなかった」と代表の広江貞夫さん。任意組合の立ち上げ、その5年後の法人化など、その都度話し合いを大切にしてきました。
 最初は集落に三つある「常会」という10世帯ほどの単位で積極的に話し合ってもらいました。最低でも月に1回、必要であれば広江さんが出向いて丁寧に疑問に答えていきました。一人ひとりの意見に耳を傾けることで、「元気で働ける人にはどんどん作業に出てもらう」「売り上げを地域に還元する」という大方針が広江さんのなかでも固まりました。
 そのため、今でも個人が持っている機械をフル活用しています。トラクタを持っている農家には荒起こし、中起こしまでやってもらい、組合から労賃と機械利用料、燃料代を払います。代かきは25馬力以上のトラクタを持っている人に任せますが、組合のトラクタ(60馬力)を借りて作業することも可能です。老若男女50人ほどが一挙に集まる播種の日は全員に日当を払います。収穫後の乾燥調製も集落内の農家に1袋600円で委託しています。
 理事には30〜50代もおり、世代交代の準備もバッチリです。

コウノトリを守ろう!
自治組織が行政を動かした

市村将大


コウノトリを印刷したQUOカード

島根から
 雲南市大東町の春殖地区振興協議会(約650戸2100人)では、地区内で営巣を始めた国の特別天然記念物コウノトリの保護活動に2017年3月から力を注いでいます。具体的には、
①「よけじ」づくり…よけじとは、田んぼの一角につくった溝。水のなくなるイネ刈り後も水が溜まり、エサとなる水生動物を保護 
②放棄田の冬の湛水…荒れていた田を整備してため池化 
③パトロール…見学や撮影に来た人がコウノトリを追い回したり、近づいたりしないよう注意 
④観察場所の整備…交流センターを観察場所とし望遠鏡等を設置
 エサとなるドジョウの放流も考えましたが、水田や水路のドジョウのDNA鑑定をしたところ在来種であることが判明。放流はせず在来種を保護する方向で検討中です。これらの活動は地元の西小学校の環境教育にもなっています。
 協議会の石川幸男会長は「当初は行政がなかなか動いてくれなかった」と振り返りますが、協議会が50万円を市に寄付したことで、行政だけでなくJA等も巻き込んだ大きな動きになっています。この50万円は、「愛のコウノトリ募金」と称して、コウノトリを印刷した500円のQUOカードを1000円で販売し集めました。最初1000枚つくりましたが、あっという間に売り切れ、最終的には1800枚も売ったそうです。

青果商が後継者育成に挑戦
3年で独立就農を目指す

保原 樹


青山社長(中央)と社員たち

兵庫から
 淡路島タマネギのブランドを守るために、淡路島では青果商(産地仲買人)による農業参入、規模拡大が進んでいます。そのなかで南あわじ市の㈲三田青果では、2016年にスタートした自社農場(2ha)での生産も広げつつ、公的な補助なしで社員の独立就農を後押しする仕組みをつくっています。
 農業に携わりたい人には、以下の二つのコースから選択してもらいます。とりあえず農業をやってみたい人は、農業部門の社員として従事するスペシャリストコース。そして本格的に独立就農を目指したい人は、3年間の期限付き採用で、栽培技術や農業経営を学び、4年目には独立を目指すプロフェッショナルコース。現在は、大阪出身の若者(38歳)が独立を目指して励んでおり、さらに19年には新卒の学生が各コースに1人ずつ加わる予定です。
 独立後も、初期投資がかかる農機や農地は三田青果から借りられるうえ、三田青果の仕事(営業)を手伝うことで、売り上げの10%を得ることができます。
 三田青果としても出荷農家が増えれば荷量を確保でき、正社員よりも安い費用で雇用できます。青山巽哉社長(38歳)は「青果商が生産を拡大するのはリスクが大きい」と言いますが、地域に農家が増えるメリットは大きいと思います。今後が楽しみな仕組みです。

国内初「猫ノ図書館」
陳列工夫で来館者3割アップ

高橋明裕


猫本コーナー 猫ノ図書館

岩手から
 奥州市の胆沢図書館は、市内でも山あいの地域に立地し、来館者数が少ないことが課題でした。「このままではいらないといわれてしまう」と危機を感じた主任司書の渡辺貴子さん。お金をかけず、今ある蔵書で何かできないかと、猫をテーマにした図書館づくりを思いつきました。世間は空前の猫ブーム。さらに『吾輩は猫である』を著した夏目漱石は、2016年が没後100年、17年が生誕150年。調べると猫関連の蔵書も400冊以上ありました。
 まずは16年2月22日(猫の日)に小さな棚で猫本コーナーを、続いて猫の生態や歴史、関連小説を集めた企画展を実施。利用者の反応もよかったので、17年2月22日に「猫本コーナー 猫ノ図書館」をオープンしました。館長には市内の飼いネコから公募し、投票で選ばれた「むぎ」が就任し、SNSで活躍しています。
 猫ノ図書館づくりの参考にしたのは、東京・神田神保町の姉川書店内にある「猫本専門 神保町にゃんこ堂」。書店内に小さな書店をつくるアイデアや、目線より上に写真パネルを展示したり表紙を見せて陳列する本を増やすなどの工夫を、館内の他のコーナーでも積極的に導入しました。すると町内外から注目を集め、来館者数は3割アップ。「楽しそうに館内を歩く利用者が増えて、職員もますますやる気になっています」

見て、食べて、体験して考える
種子法とタネ

原田順子


若者や女性の参加者も多かった

広島から
 NPO法人「市民メディアこいわし広島」が10月に開催したシンポジウム「たねと食@カフェ〜種子法廃止後の地域農業と食を学ぶ」にお邪魔してきました。
 種子法廃止を受け、「まずはタネのことを見て体験して知ってもらいたい」と企画したこのシンポ、30〜40代の主婦や仕事をリタイアして家庭菜園を楽しんでいる方など約100人が参加しており、関心の高さがうかがえました。
 会場は広島県立農業技術センター。まずは全国的にも珍しいといわれる広島県農業ジーンバンクの、マイナス1℃で1万8000種の種子を保存する冷蔵庫を視察。その冷たさを実感しました。また、イネ原種栽培圃場を視察し、研究員や栽培農家のお話を聞いて学びました。
 さらに、伝統品種を使ったお弁当を皆で味わうという、見て・食べて・感じられるプログラム。ある参加者は「難しい話はわからないが、伝統野菜のおいしさはわかった。こういう食べ物をつくる農家を守る活動をしていきたい」と感想を述べてくれました。
「市民メディアこいわし広島」は、食・農・医療・教育などに関する様々な個人や団体の取り組みを紹介する活動をしています。県独自の種子条例制定を求める運動もあることから、いずれは条例づくりについてのシンポジウムも考えているとのことです。

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