このコーナーは、「ゆるがぬ暮らし」「ゆるがぬ地域」づくりに取り組む、全国各地の耳寄りな情報です。webではその中のむら・まち元気便から“ちょっとだけ”公開します。

母の日に「カーネーション風呂」はいかが

編集部


インスタ映えすること間違いなし

愛知から
 JAあぐりタウンげんきの郷(大府市)内の「めぐみの湯」では、ユズやスダチ、ショウブなどの農産物を使った「農風呂」が人気だ。毎年、母の日には女性限定のカーネーション風呂も登場する。
 当日は湯船の一つに赤、ピンク、オレンジなど、色鮮やかなカーネーションの生花が浮かべられる。熱で花がしぼんでしまうので、1日3〜4回は交換するそうだ。
 カーネーションを提供するのは、阿久比町の花卉農家・鈴村忠由さん夫妻。風呂用に無農薬で育てたカーネーションの花の部分だけをとり、45袋で10袋ほど納品する。

市がつくった、
自然環境保全に軸足をおく農業法人

吉野隆祐


水田型市民農園での田植え

千葉から

 野田市江川地区には、長らく耕作されていなかった水田と林地を合わせた約90haの宅地化計画があったが断念された。2006年、ここの自然環境を保全しようと、市が99・9%出資する㈱野田自然共生ファームが設立された。法人で32haを買い、うち10haを復田してイネの作付けを始めた。環境保全が目的なので、農薬はほとんど使わない。
 07年には2haを使って「水田型市民農園」を開園。年間4500円の料金で、田植えや草取り、収穫祭など6回のイベントに参加でき、行事ごとに5kgの玄米も配布される。田植えには、地域の小学校の体験学習なども含め400人が参加する。
 また、環境保全のシンボルとして、12年からコウノトリを飼育。東京の多摩動物公園から雌雄2羽を譲り受け、現在まで11羽が誕生し放鳥。昨年は4羽戻ってきた。とれた米はコウノトリ米として市内の学校給食へ供給している。
 そのほか、堆肥センターやモミガラ粉砕施設も運営している。粉砕したモミガラと牛糞、市内の剪定枝や落ち葉などを混ぜて堆肥化する。
 15年には、就農支援事業所も設置した。新規就農希望者4人を法人社員として雇用し、法人が借りている畑でエダマメやホウレンソウ、キャベツなどの栽培研修を行なっているそうだ。

日本一の「神山すだち」、営業に東奔西走

上野亮太


NPOのポスター

徳島から
 神山町の特産品といえばスダチ。流通しているスダチの98%は徳島県で栽培され、中でも神山町は最も生産量が多い町です。しかし近年は獣害や農家の高齢化に加え、市場価格が伸び悩んでいました。
 そこで、「『神山すだち』をもっと普及しよう!」とスダチ農家や元地域おこし協力隊員、役場職員などが理事となって「NPO法人里山みらい」を立ち上げました。
 地元の生産者グループからスダチを買い、B・C品も含めて販売。年に3〜4回東京に行き、飲食店に営業するほか、東京の「阿波踊り連」に協賛しているキリンビールとタイアップして「スダチビール」を祭りで販売したり、地元農家やJAの加工所で加工したスダチサワーを酒屋に並べるなど、幅広い普及活動を展開しています。
 海外輸出も手掛けています。2018年には生果1t弱をフランスに輸出し、料理の香り付けなどに使ってもらったところ、シェフの評判も上々だったそうです。
 19年3月には町・JA・NPOの3者で、「神山すだち」を後世界に残すべく協力して活動していくという協定を結びました。また、販路が増えてきたので、生産者グループだけでなくJAからもスダチを購入しています。「自分だけ、メンバーだけで儲けても先がない。みんなが儲かる仕組みをつくるのが一番大事だと思う」と、理事長の佐々木宗徳さんは言います。

漁家の女性がセンダンの葉でお茶づくり

荒井康介


干した葉を手もみ

佐賀から
 唐津市の離島・向島の漁家の女性9人からなるグループが、島に植樹したセンダンの葉でつくったお茶を加工し、販売を開始した。
 センダンの植樹は2011年、唐津市の離島振興に取り組むNPO法人「レインボー七つの島連絡会議」のボランティアらとともに行なった。センダンは生長が早く、木材や茶葉など使い道が多様にあることから、漁業に次ぐ産業おこしを期待したという。耕作されていない田畑を借り、5mおきに200本を植えた。
 交代で草刈りや病気対策などをしながら、お茶づくりの準備を進めてきた。専門機関に調べてもらい、葉にインフルエンザ予防の効果があることもわかった。18年、ついに本格的な生産に入った。
 葉の収穫と製茶は6月から10月頃まで。皆ウニやアワビ、サザエなどの海士漁を中心に暮らしているが、6月以降、女性は海に潜らず陸でウニをさばく仕事が中心になるので、その合間の仕事だ。摘んだ葉をせいろで約4分蒸し、陰干しした後に手もみで仕上げる。この4日間の工程を繰り返す。
 33kgの葉を摘み、6・6kgの茶をつくった。市内のいくつかの直売所で、3gのティーバッグ10個入りを1000円で販売している。
 このセンダン、もう少し経てば木材としての価値も出るというが、代表の樋口順子さんは「私たちは葉っぱのほうが欲しい。お茶をどんどん売らんば!」と意気込む。

イノシシ駆除のワナ販売、肉利用で起業

荒井康介


箱ワナ2基セット(11万円)

佐賀から
 嬉野市の太田政信さん(30歳)は2017年、害獣捕獲のための箱ワナ等をつくる「太田製作所」を立ち上げた。
 茶農家の長男だが、独立してイノシシ駆除に奮闘。6年前に狩猟免許を取得し、自宅ガレージで溶接機を使って箱ワナづくりを始めたのが始まりだ。
 箱ワナは、亜鉛メッキの金網を曲げて組むことで、軽く、腐食にも強いのが特長。注文が徐々に増え、これまでに約100台を売り上げた。最近ではくくりワナや電気止め刺し器もつくっている。
 解体や肉処理にも力を入れ、若い人や都会の人にも狩猟に興味を持ってもらうため、フェイスブック等でワナづくりや駆除活動の発信もしている。太田さんがマンツーマンで教える箱ワナづくり教室も人気だ。継続的に発信した結果、狩猟に興味を持つ若者らが解体を手伝い、イノシシ肉を楽しむ「嬉野狩部」も発足した。
 また、ワナの宣伝も兼ね、自分でも近隣に30基を仕掛けている。数が多いと見回りが大変だ。監視カメラがあると便利だが、1台5万円超と高いので、購入費をクラウドファンディングで集め、返礼品としてイノシシ肉を送ることを思いついた。85人から約113万円が寄せられ、18台のカメラを設置できたそうだ。
 さらに、市内に食肉処理施設をつくる構想も温めているという。

行政・大学・「多面」組織の連携でサル退治

編集部


ロケット花火発射装置試作1号機

静岡から
 浜松市北区の引佐町では、ミカンや家庭菜園の野菜がサルに食べられてしまう被害が年々増えていました。6年前に脱サラして家に戻りミカンづくりを始めた野沢正敏さん(46歳)はこの状況を打破しようと奮闘。行政や大学の力も借りながら、被害を減らしつつあります。
 行政と組んで、捕獲した親子のサルの体に1個ずつGPS発信器を取り付け、行動範囲を1年かけて地図に落とし、寝床なども特定することができました。
 静岡大学工学部とは、従来ロケット花火が同時に2発しか発射できなかったのに対し、5発同時に発射できる装置を開発。これにより、銃を持っていない人でもサルを追い払うことができます。
「サル対策は一度来たときにどれだけビビらせることができるかが大事」と、野沢さんは近くにサルが出たら5発同時発射のロケット花火装置を携え、山の中まで原付バイクで追いかけ、二度と来ないように恐怖心を与えます。
 野沢さんが事務局長を務める多面的機能支払の活動組織では、これまで約250本の放任果樹を伐採。サルが入らないよう柵もつくっています。交付金でロケット花火も購入し、地域に欠かせない組織になっています。
 野沢さんは、「10年後も20年後も地域が存続していくためには農業が不可欠だ、という思いが背景にある」と熱く語ってくれました。

葉タバコの廃作跡で薬草栽培、医食同源の郷づくり

渡邊紗恵子


ムラサキとカンゾウの入浴剤

福島から
 葉タバコ栽培が盛んだった平田村では、後継者不足や高齢化で遊休地が目立ちつつあるそうです。そこで今、役場産業課と奥羽大学薬学部が提携し、県からの補助も受けながら、薬草の試験栽培が始まっています。
 作付けているのはウラルカンゾウ(露地5000株、ハウス1000株)、ムラサキ(露地・ハウスで750株、プランターで50株)、オタネニンジン(露地で110株)など。ハウスは産業課直営の施設「ジュピアひらた」にあり、スタッフが常駐しています。標高600mでの栽培は全国初のようで、露地に加えハウス栽培も同時に開始できたのは強味です。
 道の駅ひらたと提携して「医食同源の郷づくり」プロジェクトも始動しました。これらの薬草を中心に、アスパラガス、ジネンジョ、ソバ、ハバネロなど村の既存の特産品およびタンポポなどの野草の健康機能性にも着目し、商品を次々に開発しています。たとえば、7種類の生薬を入れた「薬膳カレー」やそれをレトルト化したもの、ムラサキやカンゾウを入れた入浴剤、冷え性改善やデトックス効果のある「たんぽぽの力」などです。
 農家の間では「タバコはもうつくれなくても、薬草ならできそう」という反応もあるようです。シバザクラやアジサイで一大観光地化している平田村の知名度がさらにアップしていくことと思います。

「家族農業」と「小農」をめぐる院内集会

阿部道彦


わかりやすいテキストを農文協で発行した

東京から
 昨年末の国連総会で「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」が採択され、今年から「家族農業の10年」がスタートします。世界的に家族農業見直しの機運が高まるなか、日本ではほとんどそれが報道されません。政府は小農の権利宣言の国連採択を棄権し、農業の大規模・企業化一辺倒の政策を推し進めています。
 そこで、小農の権利宣言と家族農業の10年の意義を改めて確認し、政府に取り組みを求めていこうと、2月18日、参議院議員会館で集会が開かれ、国会議員5人を含む116人が参加しました。
 集会の第2部に行なわれた外務省や農林水産省の担当官との意見交換会では、農家・市民と官僚との立場の違いが鮮明に。たとえば、外務省の田村優輝氏(人権人道課首席事務官)は小農の権利宣言の採択で日本が棄権した理由は、条文が示す権利は「既存の人権メカニズムの活用」で保証されると考えたからだと説明。また、この宣言には、国際条約のような加盟国への法的拘束力はないと繰り返しました。
 出席した農水省の担当官を含め、具体的にこの二つに取り組もうという姿勢は見られず、枝元なほみさん(料理研究家)は「(官僚の)みなさんにとっては他人事のように聞こえる」とフロアから発言。二つの意義を深く学んで、日本と世界の潮流とのギャップを埋めていかなくてはと痛感しました。

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