2011年3月31日発売 定価926円(税込)
ありがとう、TPP さらば、TPP
菅直人首相が2010年10月1日に「TPP交渉への参加を検討」と突如表明し、同月19日に前原誠司前外相が「GDP1.5%の第1次産業がほかの98.5%を犠牲にしている」と述べて加速したTPP論議。首相はその後も「平成の開国」「第3の開国」「開国と農業再生の両立」などとくり返し、マスメディアも「大胆な開国で農業改革を急ごう」(読売新聞、元旦社説)などと応援、財界はもとより、労働界からも支持の声が続いた。
菅・前原両氏をはじめ、TPP推進側は、当初、小泉構造改革の「抵抗勢力」さながらに「農業vs他産業」の図式で農業を孤立させる作戦だったのだろう。しかし、長野県中川村で農協、村議会に商工会や建設業協会が加わって村ぐるみのTPP反対デモが行なわれ、岩手県でも農協中央会に県建設業協会、県生協連などが「TPPを考える県民フォーラム」を結成し、「TPP開国論を糺す」と題する講演会を開いたように、地域では「農業vs他産業」の図式は崩れ、業種の壁を越えた反TPPの結びつきが強まっている。全国レベルでも、自覚的消費者の組織である生活クラブ生協、パルシステム生協連、大地を守る会などが賛同団体となり、「TPPを考える国民会議」が結成された。
2009年衆院選で「国民の生活が第一」のスローガンとマニフェストを掲げ、歴史的政権交代を果たした民主党だったが、今号の特集や昨年末緊急出版の『TPP反対の大義』では、菅・前原両氏をはじめとする現政権が、アメリカと一部輸出企業の利益を最優先し、地方や中小企業、多数の国民の暮らしを犠牲にする小泉構造改革路線もどきに変節していることが明らかになった。政権交代への国民の期待とは真逆の方向である。
突然の「TPP参加の検討」だったが、それによって国民が政権の完全なる変節に気づき、業種の壁を越えて地域が団結した意義は大きい。その意味で「ありがとう、TPP」、そして「さらば、TPP」と言いたい。
──編集部